亜鉛は、免疫機能や味覚、代謝、肌や髪の健康など、体のあらゆる働きを支える“欠かせないミネラル”です。しかし現代人は不足しやすく、「なんとなく不調」の原因になっていることも。
そこで本記事では、文部科学省の食品成分表をもとにした「亜鉛を多く含む食材ランキングTOP10」を中心に、カテゴリ別の高含有食材、吸収率を高める食べ合わせ、注意点までわかりやすくまとめました。
日々の食事にムリなく亜鉛を取り入れたい方は、ぜひ参考にしてください。
亜鉛ってどんな栄養素?

亜鉛は、私たちの体内でさまざまな生命活動に関わる必須ミネラルのひとつです。体内ではつくり出すことができないため、食事からの摂取が欠かせません。
とくに、
- 「免疫力を高めたい」
- 「肌や髪をきれいに保ちたい」
- 「疲れにくい体をつくりたい」
といった健康・美容の維持には、亜鉛が重要な役割を果たします。
では具体的に、どんな働きがあるのでしょうか?また、不足するとどのような影響が出るのか、過剰摂取による注意点も含めて詳しく見ていきましょう。
亜鉛の主な働き(免疫・味覚・代謝など)
亜鉛は、300種類以上の酵素の働きをサポートする“縁の下の力持ち”的な存在です。
主な働きは次のとおりです:
免疫機能の維持:ウイルスや細菌から体を守る免疫細胞の活性化に関与。
味覚を正常に保つ:味を感じる「味蕾(みらい)」の細胞は亜鉛を必要とします。
成長・発達のサポート:細胞分裂に欠かせない栄養素として、子どもの発育にも重要。
皮膚や粘膜の健康維持:肌トラブルや口内炎の予防に関わる。
たんぱく質・DNAの合成:筋肉づくりや修復、代謝機能全般にも関与。
このように、体のあらゆる機能に広く関与しているため、「不足しやすいけれどとても大事な栄養素」といえます。
亜鉛不足の症状とリスク
現代の日本人は、意外にも慢性的な亜鉛不足になりがちです。とくに以下のような症状があれば、亜鉛不足の可能性があります。
- 味がわかりにくくなった(味覚障害)
- 風邪をひきやすい、治りにくい
- 髪の毛が抜けやすい、肌荒れが気になる
- 疲れやすい、集中力が続かない
- 食欲が落ちた、成長が遅い(子ども)
また、妊娠中や授乳中、高齢者、ベジタリアンの方はとくに亜鉛が不足しやすいとされています。偏った食生活や加工食品中心の食事では、必要量を満たせないことが多いため注意が必要です。
過剰摂取による影響も知っておこう
亜鉛は大切な栄養素ですが、サプリメントなどで過剰に摂取すると副作用が出る場合があります。
たとえば:
- 胃の不快感や吐き気
- 銅の吸収阻害による貧血
- 免疫機能の低下(過剰すぎると逆効果)
厚生労働省が定める「耐容上限量(1日あたり)」は、成人男性で40〜45mg、女性で35mg前後とされています。
通常の食事では過剰になる心配はほとんどありませんが、サプリや栄養ドリンクを複数併用する場合は注意が必要です。
年齢・性別で異なる!1日の亜鉛推奨摂取量

亜鉛は、私たちの体に欠かせないミネラルですが、必要な摂取量は年齢や性別、ライフステージによって異なります。
たとえば、成長期の子どもや妊娠中・授乳中の女性では、より多くの亜鉛が求められます。
ここでは、厚生労働省が公表している推奨量(日本人の食事摂取基準2020年版)に基づいて、どのくらい摂ればよいのかを具体的に見ていきましょう。
厚生労働省が定める目安量(表付き)
以下は、年齢・性別ごとの1日あたりの亜鉛推奨量(推定平均必要量・推奨量)です。
| 年齢区分 | 男性(mg/日) | 女性(mg/日) |
| 1~2歳 | 2 | 2 |
| 3~5歳 | 3 | 3 |
| 6~7歳 | 4 | 4 |
| 8~9歳 | 5 | 4 |
| 10~11歳 | 6 | 5 |
| 12~14歳 | 8 | 7 |
| 15~17歳 | 9 | 7 |
| 18~29歳 | 10 | 8 |
| 30~49歳 | 10 | 8 |
| 50~69歳 | 10 | 8 |
| 70歳以上 | 9 | 8 |
| 妊婦 | ― | +2 |
| 授乳婦 | ― | +3 |
※推奨量(RDA)は健康を維持するために必要とされる目安量です。
※妊娠・授乳中の女性は、通常の摂取量にプラスして追加摂取が推奨されています。
ライフステージ別に必要量が変わる理由
年齢やライフステージごとに亜鉛の必要量が異なるのは、それぞれの代謝や身体活動、成長・再生の速度が違うからです。
成長期の子どもや思春期の若者は、骨や筋肉、内臓などの発達が活発なため、細胞分裂に関わる亜鉛の需要が高くなります。
成人男性は筋肉量や代謝の関係で、女性よりも多めの亜鉛が必要です。
妊娠・授乳中の女性は、胎児や母乳を通して赤ちゃんに栄養を供給するため、普段より多くの亜鉛が求められます。
高齢者は食事量の減少や吸収効率の低下によって、見かけ上の必要量は変わらなくても、実質的な摂取不足に陥りやすい傾向があります。
このように、亜鉛は「誰でも一律に必要」というわけではなく、その人の体の状態やライフステージに応じた摂取設計が大切です。
【最新】亜鉛を多く含む食材ランキングTOP10

「亜鉛を摂りたい」と思っても、どの食材に多く含まれているかを把握していないと、なかなか効率よく摂るのは難しいもの。
ここでは文部科学省『日本食品標準成分表(八訂)』をもとに、100gあたりの亜鉛含有量が多い食品をランキング形式でご紹介します。
健康管理や献立の参考に、ぜひチェックしてみてください。
上位食材と含有量(食品成分表ベース)
以下が、100gあたりの亜鉛含有量が多い食品トップ10です。(※可食部ベース)
| 順位 | 食品名 | 亜鉛含有量(mg) |
| 1位 | かき(缶詰・水煮) | 25.4 |
| 2位 | かき(生) | 13.2 |
| 3位 | からすみ | 9.3 |
| 4位 | ビーフジャーキー | 8.8 |
| 5位 | 豚レバー(焼き) | 6.9 |
| 6位 | 牛肩ロース(焼き) | 6.2 |
| 7位 | 小麦胚芽 | 6.0 |
| 8位 | パルメザンチーズ | 5.9 |
| 9位 | ごま(乾) | 5.9 |
| 10位 | するめ | 5.7 |
特に牡蠣は「海のミネラル宝庫」とも呼ばれ、ダントツで亜鉛が豊富です。次いで、加工肉やナッツ類、チーズなども上位に入り、動物性と植物性の両方から摂取できることがわかります。
毎日の食事に取り入れやすい食材は?
ランキング上位には魅力的な食材が並びますが、日常の食事に取り入れやすいかどうかも大切です。
以下は、手軽に使えて栄養価も高い「実用性の高い食材」の例です。
かき(加熱調理 or 缶詰):炊き込みご飯やパスタにも応用でき、保存性も◎
ビーフジャーキー・豚レバー:おつまみやおかずに便利。レバーは鉄分も同時に補給可能
パルメザンチーズ・ごま:サラダやパスタにふりかけるだけでOK。小量でも効果的
納豆・卵・味付け海苔:冷蔵庫に常備しやすく、朝食にぴったり
アーモンド・かぼちゃの種:間食やおやつに自然な形で取り入れやすい
これらは「無理なく・美味しく・効率よく」亜鉛を摂取するのに最適です。次の章では、食材をカテゴリ別に詳しく紹介します。
カテゴリ別!亜鉛が多い食材一覧

亜鉛はさまざまな食品に含まれていますが、どのジャンルにどのくらい多いのかを知っておくと、毎日の献立に取り入れやすくなります。
ここでは、「魚介類」「肉類」「大豆・豆類・ナッツ類」「卵・乳製品・チーズ類」「穀類・海藻・きのこ類」に分けて、特に含有量が多い代表的な食材をご紹介します。
それぞれの特徴や調理しやすさも合わせて解説するので、ライフスタイルに合った食材選びの参考にしてください。
魚介類編
魚介類は、亜鉛が豊富で吸収率も高い食材の宝庫です。特に貝類や乾物系に注目。
| 食材 | 亜鉛含有量(mg/100g) | 特徴 |
| かき(缶詰・水煮) | 25.4 | 圧倒的な含有量。缶詰なら保存も便利 |
| かき(生) | 13.2 | 加熱調理にも使いやすい |
| からすみ | 9.3 | 高級珍味。酒肴やご飯のお供に最適 |
| するめ | 5.7 | 常温保存できる亜鉛源。おやつにも◎ |
| いわし煮干し | 5.1 | だしにも、まるごとおやつにも使える |
おすすめの食べ方: かきの炊き込みご飯、味噌汁に煮干し、するめをスナック代わりに。
肉類編
肉類は吸収されやすいヘム亜鉛を多く含み、エネルギー源にもなる万能食材です。
| 食材 | 亜鉛含有量(mg/100g) | 特徴 |
| ビーフジャーキー | 8.8 | おつまみや間食に便利。保存性も高い |
| 豚レバー(焼き) | 6.9 | 鉄分・ビタミン豊富。加熱調理が必須 |
| 牛肩ロース(焼き) | 6.2 | 普段の食事にも取り入れやすい部位 |
| ラム肉(肩) | 5.0 | 臭みが少なく、低糖質高たんぱく |
| 鶏もも(皮つき・焼き) | 2.4 | 手頃で調理しやすい。亜鉛も含む万能選手 |
おすすめの食べ方: ステーキ、焼肉、レバニラ炒め、ラムしゃぶなど。
大豆・豆類・ナッツ類
植物性食品の中では、種実類や豆類が比較的多くの亜鉛を含みます。食物繊維やビタミンEも同時に摂れるのが嬉しいポイント。
| 食材 | 亜鉛含有量(mg/100g) | 特徴 |
| ごま(乾) | 5.9 | すりごまにすると吸収率アップ |
| アーモンド(乾) | 3.6 | おやつやサラダトッピングに最適 |
| かぼちゃの種 | 7.7 | ナッツ売り場で購入可能。栄養密度高 |
| 納豆 | 1.9 | 発酵食品+たんぱく源として優秀 |
| 木綿豆腐 | 0.6 | 量を食べれば立派な補給源に |
おすすめの食べ方: ごま和え、ナッツを使ったグラノーラ、納豆ご飯、豆腐ステーキ。
卵・乳製品・チーズ類
朝食や間食として取り入れやすいカテゴリー。日常的に無理なく継続できる食材が豊富です。
| 食材 | 亜鉛含有量(mg/100g) | 特徴 |
| パルメザンチーズ | 5.9 | サラダ・パスタにふりかけるだけで◎ |
| 卵黄(生) | 4.2 | たんぱく質とセットで摂れる優良食材 |
| プロセスチーズ | 3.2 | おやつやお弁当に使いやすい |
| ヨーグルト(全脂無糖) | 0.4 | 腸内環境の改善とセットで習慣化しやすい |
| 牛乳(普通) | 0.4 | 量を摂れば補給に貢献できる |
おすすめの食べ方: チーズトースト、温玉丼、ヨーグルト+ナッツの組み合わせ。
穀類・海藻・きのこ類
主食や副菜として取り入れられる食材が多く、ベジタリアンの方にもおすすめです。
| 食材 | 亜鉛含有量(mg/100g) | 特徴 |
| 小麦胚芽 | 6.0 | パン生地やグラノーラに活用可能 |
| オートミール | 2.5 | 朝食に人気。食物繊維も豊富 |
| 味付けのり | 1.8 | おにぎりやスープにプラスできる |
| 干ししいたけ | 1.0 | だしに使うと栄養も無駄なし |
| ひじき(乾) | 1.3 | ミネラル豊富。煮物に最適 |
おすすめの食べ方: ひじきの煮物、オートミールご飯、海苔の味噌汁など。
亜鉛の吸収率を上げる食べ合わせ&注意点
せっかく亜鉛を多く含む食材を選んでも、体にうまく吸収されなければもったいないですよね。亜鉛は、他の栄養素との組み合わせによって吸収率が大きく変わるという特徴があります。
ここでは、吸収を高めてくれる食べ合わせと、逆に吸収を妨げる要因を解説します。毎日の食事でちょっと意識するだけで、亜鉛の効率的な摂取につながりますよ。
相性のよい栄養素
亜鉛の吸収をサポートする栄養素には、次のようなものがあります。
動物性たんぱく質(肉・魚・卵)
→ 胃酸の分泌を促し、亜鉛の溶解を助けます。亜鉛そのものも多く含むので一石二鳥。
ビタミンC(野菜・果物)
→ ミネラル類の吸収率を高める効果があります。特に植物性食品と一緒に摂ると効果的。
クエン酸(レモン・酢・梅干しなど)
→ 金属イオンと結合して体内に取り込まれやすくする“キレート作用”があります。
ビタミンB6(まぐろ・バナナ・さつまいもなど)
→ 亜鉛を含む酵素の活性に関与し、代謝を円滑にします。
おすすめの組み合わせ例:
- レバニラ炒め+もやしやピーマン(ビタミンC)
- 焼き魚+大根おろし+レモン
- 納豆+キムチ+卵(ビタミンB6)
吸収を妨げる成分
一方で、以下の成分は亜鉛の吸収を阻害する可能性があります:
フィチン酸(穀類・豆類の外皮)
→ 玄米、精製していない小麦、大豆製品などに含まれ、亜鉛と結合して排出されやすくなります。
シュウ酸(ほうれん草・たけのこ・コーヒーなど)
→ 他のミネラル(カルシウムなど)と同様、吸収を妨げる働きがあります。
カルシウム・鉄の過剰摂取(サプリメント等)
→ 亜鉛と競合して吸収を妨げるケースがあります。
アルコール
→ 亜鉛の代謝を早め、体外への排出を促進してしまいます。
対策ポイント:
玄米や豆類は「発酵させる」「よく加熱する」「精白穀と組み合わせる」などでフィチン酸の影響を軽減できます。サプリを使う場合は、ミネラルを一緒に摂りすぎないようラベルを確認しましょう。
亜鉛が豊富な海の恵み「ほや塩辛」もおすすめ!

ここまでご紹介してきたとおり、亜鉛は魚介類に豊富に含まれており、特に貝類は優秀な供給源です。なかでも、最近注目を集めているのが、三陸の海で育った「ほや」を使った発酵食品──それが「ほや塩辛」です。
ほやは「海のパイナップル」とも呼ばれる珍しい海産物で、亜鉛をはじめとするミネラルやアミノ酸、タウリンなどが豊富に含まれています。
独特の磯の香りと旨味がクセになる味わいで、通のファンも多い食材です。そのほやを、塩と発酵の力でじっくり熟成させたのが「ほや塩辛」。生のままでは傷みやすいほやを、保存性と旨味を兼ね備えた逸品に仕上げた伝統的な加工食品です。
まとめ|毎日の食事で無理なく亜鉛補給を

亜鉛は、私たちの体の中で味覚・免疫・代謝・肌や髪の健康など、さまざまな働きを支えてくれる大切な栄養素です。
しかしながら、現代の食生活では不足しがちで、知らないうちに「なんとなく不調」の原因になっていることも少なくありません。
今回ご紹介したように、亜鉛は魚介類・肉類・豆類・チーズ・ナッツ類など幅広い食材に含まれており、毎日の食事で少し意識するだけで、無理なく摂取できます。
さらに、「ほや塩辛」のように美味しくて栄養価の高い発酵食品をうまく活用すれば、手軽に楽しく亜鉛を補うことも可能です。まずは身近な食材から、少しずつ取り入れてみませんか?
参考文献
本記事で扱った数値・含有量・推奨摂取量は、以下の一次情報に基づいています。
● 厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)
* URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
* 内容:年齢・性別ごとの「推定平均必要量」「推奨量」「耐容上限量」など、亜鉛を含む各種栄養素の基準値を明記。
● 文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
* 総合ページ:https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
* 食品成分データベース(検索):https://fooddb.mext.go.jp/
* 内容:食品100gあたりの亜鉛含有量データ(牡蠣、肉類、種実類、海藻、きのこなど)。ランキング・表記で使用した数値はすべてここに基づく。
