鉄分1日の推奨摂取量とは?年齢・性別別の目安と不足を防ぐ食事のコツを解説

まとめ|鉄分はヘム鉄と非ヘム鉄を理解して毎日コツコツ補うのが健康のカギ

私たちの体に必要な鉄分の1日の推奨摂取量は、性別や年齢によって異なります。ライフステージに応じた摂取量の把握がとても重要です。

この記事では、最新の食事摂取基準(2025年版)に基づいた鉄分の1日推奨量をはじめ、不足を補うために意識したい食事の工夫、鉄の吸収を高めるポイント、サプリメントの活用法まで、初心者にもやさしく丁寧に解説していきます。

「自分にはどれくらいの鉄分が必要なのか?」
「毎日の食事でどう補えばいいのか?」

そんな疑問を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。

鉄分1日の摂取量を補うためには?

鉄分1日の摂取量を補うためには?

鉄分は、ただ摂るだけでなく、「どんな種類の鉄を、どのように摂るか」がとても大切です。せっかく鉄分を含む食品を選んでも、体に吸収されにくければ意味がありません。

この章では、鉄分の種類と吸収率の違い、そして吸収を助ける食べ方の工夫についてわかりやすく解説します。

鉄分の種類と吸収率の違い(ヘム鉄と非ヘム鉄)

鉄分には大きく分けて「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。この違いは、吸収率の高さと含まれる食品によって決まります。

種類 主な食品例 吸収率の目安
ヘム鉄(動物性) レバー、赤身肉、魚(かつお・いわし・まぐろなど) 約10〜20%
非ヘム鉄(植物性) ひじき、納豆、ほうれん草、小松菜、大豆製品など 約2〜5%

ヘム鉄は体に吸収されやすいため、鉄分を効率よく摂りたいときは動物性食品を意識して取り入れるのがポイントです。一方で、非ヘム鉄も含有量が多い食品が多く、日常の食事には欠かせません。吸収率を高める工夫と組み合わせることで、より効果的に活用できます。

    鉄分の吸収を高める食べ合わせとは?
    非ヘム鉄の吸収率は低めですが、ある栄養素と一緒に摂ることで吸収率がぐっとアップします。代表的なのが「ビタミンC」「動物性たんぱく質(肉・魚・卵)」です。

鉄分吸収を助ける食べ合わせ例

  • ひじきご飯+みかんやキウイなどのフルーツ
  • 納豆+野菜サラダ+レモン汁ドレッシング
  • ほうれん草のソテー+肉や魚のメインディッシュ

逆に、お茶やコーヒーに含まれるタンニンや、カルシウムを含む乳製品は鉄の吸収を妨げることがあるため、鉄分を意識した食事の直前・直後は控えめにするのがベターです。

「なにを食べるか」だけでなく、「どう組み合わせるか」も鉄分補給の大切なポイント。毎日の食事に、少しの工夫を取り入れるだけで、鉄の吸収効率はぐっと変わります。

鉄分の1日の推奨摂取量(年齢・性別・ライフステージ別)

鉄分の1日の推奨摂取量(年齢・性別・ライフステージ別)

厚労省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に基づく具体的な数値表
以下は、年齢・性別ごとに定められた鉄の推奨摂取量の一覧です(単位:mg/日)。
※女性は月経のある場合の値を掲載。

年齢区分 男性 女性(※月経あり)
18~29歳 7.0 10.0
30~49歳 7.5 10.5
50~64歳 7.0 10.5
65~74歳 7.0 ー(参考:6.0)
75歳以上 6.5 ー(参考:5.5)
妊娠初期 +2.5
妊娠中期以降 +8.5
授乳中 +2.0

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」

成人男女の基準値(1日あたり)

鉄分の必要量は性別によって異なります。成人男性の目安は7.0〜7.5mg/日、女性は月経の有無によって必要量が変わります。月経がある女性:10.0〜10.5mg/日、月経がない女性(閉経後など):6.0mg/日となっています。

性別 状態 推奨摂取量(mg/日)
男性(18~64歳) 7.0〜7.5
女性 月経あり 10.0〜10.5
女性 月経なし(閉経後など) 約6.0

女性は月経による鉄の損失があるため、男性よりも多くの鉄分が必要になります。

妊娠中・授乳中など特別な条件下の摂取量

妊娠・授乳期は体内の鉄の必要量がぐんと増えるため、通常より多く摂る必要があります。

状態 推奨摂取量(mg/日)
妊娠初期 13.0
妊娠中期・後期 19.0
授乳中 12.5

妊娠後期には1日18mg以上が必要になる計算で、普段の2倍近い量になります。食事だけでは補いきれないことも多いため、医師の指導のもとでの鉄剤やサプリ活用が検討されます。

日本人は鉄分が足りていない?平均摂取量との比較

実際の日本人の食生活では、特に女性の鉄分摂取量が不足しているのが現状です。

成人男性:約8.0mg/日(必要量は満たしている)
成人女性:約7.3mg/日(必要量に届いていない

女性は必要量より2〜3mg足りていないため、慢性的な鉄不足に陥りやすく、貧血や体調不良の原因になることも。とくに若年女性や妊娠中の方は、意識的に鉄分を摂る工夫が必要です。

【吸収効率込み】鉄分が効率よく摂れる食品ランキング TOP10

鉄分は「含まれている量」だけでなく、体にどれだけ吸収されるか(吸収効率)もとても重要です。特に、動物性食品に含まれる「ヘム鉄」は吸収されやすく、植物性の「非ヘム鉄」は吸収率が低めです。

ここでは、1食あたりの摂取目安量に基づいて、実際に体内で吸収される鉄の量(推定)が多い順に並べたランキングをご紹介します。普段の食事で効率よく鉄分を補いたい方は、ぜひ参考にしてください。

順位 食品名 鉄の種類 目安量 鉄分含有量(mg) 推定吸収量(mg)※ヘム鉄15%、非ヘム鉄5%
1 豚レバー(焼き60g) ヘム鉄 60g 約7.8 約1.17
2 ほや(生100g) ヘム鉄 100g 約4.3 約0.65
3 牛もも赤身肉(150g) ヘム鉄 150g 約4.1 約0.62
4 あさり(水煮缶70g) ヘム鉄 70g 約2.7 約0.41
5 いわし(丸干し60g) ヘム鉄 60g 約2.0 約0.30
6 かつお(100g) ヘム鉄 100g 約1.9 約0.29
7 納豆(100g=2パック) 非ヘム鉄 100g 約3.0 約0.15
8 小松菜(ゆで150g) 非ヘム鉄 150g 約3.2 約0.16
9 ほうれん草(ゆで150g) 非ヘム鉄 150g 約1.4 約0.07
10 玄米ごはん(150g) 非ヘム鉄 150g 約0.6 約0.03

表からわかる通り、トップは豚レバー。ごく少量でもしっかり鉄が吸収される優れた食材です。意外なところでは、東北の海の幸「ほや」が第2位にランクイン。赤身肉や魚よりも高い吸収効率を誇ります。

また、野菜や豆類は鉄の含有量があっても吸収率が低めなので、ビタミンCや動物性たんぱく質と組み合わせて摂るのが効果的です。日常の献立に取り入れやすい食材ばかりなので、「量より質」を意識しながら、鉄分を効率よく補給するヒントとして活用してみてください。

鉄分不足で起こる症状・不調

「なんとなく体がだるい」「やる気が出ない」――そんな不調、もしかすると鉄分不足が原因かもしれません。鉄分は、全身に酸素を運ぶヘモグロビンの材料として欠かせない栄養素。足りなくなると、体にも心にもさまざまな影響が出てきます。

鉄分が足りないとどうなる?主な身体症状

鉄分が不足すると、鉄欠乏性貧血などの症状が現れることがあります。特に以下のような体調の変化は、鉄不足のサインかもしれません。

  • 疲れやすい・だるい
  • 息切れしやすい
  • めまいや立ちくらみ
  • 頭痛・肩こり
  • 集中力が続かない
  • 動悸がする
  • 顔色が悪い(青白い)

血液中の酸素運搬がうまくいかなくなることで、エネルギー不足のような症状が起きやすくなります。

メンタルや美容にも影響が出る?

鉄分不足の影響は、見た目や心の状態にも表れることがあります。

  • イライラ・気分が落ち込みやすい
  • 寝つきが悪い・眠りが浅い
  • 抜け毛が増える・髪が細くなる
  • 爪が割れやすい・反り返る
  • 肌荒れ・顔色が悪い

これは鉄が、神経伝達物質(セロトニン・ドーパミンなど)の合成にも関わっているからです。気分の安定や睡眠、肌や髪の健康にも鉄は不可欠な栄養素です。

鉄分不足になりやすい人の特徴と原因

以下のような人は、特に鉄分不足に注意が必要です。

特徴・状況 原因の例
月経がある女性 定期的な出血により鉄が失われる
妊娠・授乳中の女性 胎児や母乳を通じて鉄の需要が大幅に増える
成長期の子ども・10代の女子 身体の成長により鉄の必要量が増える
極端なダイエットをしている人 食事量が少なく、鉄分の摂取不足が起こりやすい
肉や魚をあまり食べない人 ヘム鉄(吸収されやすい鉄)の摂取不足
胃腸の調子が悪い人 吸収力の低下や出血性の病気が隠れている場合もある

とくに女性・子ども・菜食中心の方は、無意識に鉄不足になりがちです。日々の不調が気になる方は、食生活を見直して鉄分の摂取量をチェックしてみましょう。

サプリメント・過剰摂取の注意点

サプリメント・過剰摂取の注意点

鉄分が不足しがちな人にとって、サプリメントは便利な補助手段です。しかし、使い方を誤ると体に負担をかけることもあるため、安全な摂取と正しい知識が欠かせません。

サプリ使用時の注意事項(副作用・上限量)

鉄のサプリメントは、医師から処方されるものと市販の栄養補助食品があります。いずれも過剰に摂取すると副作用が出る可能性があるため注意が必要です。

    よくある副作用:

  • 胃のむかつき・吐き気
  • 便秘や下痢
  • 黒い便が出る
  • 腸の不快感

また、体内に鉄が過剰に蓄積されると「鉄沈着症(ヘモクロマトーシス)」などの疾患リスクもあります。

    耐容上限量(UL)とは?

    厚生労働省は、通常の食事からの鉄摂取には上限を設けていませんが、サプリや鉄剤などからの補給については、成人で1日350mgを超えないことが目安とされています(※治療目的を除く)。特に貧血ではない人が鉄を多くとっても、健康上のメリットはないとされています。

食事で補うのが基本である理由

サプリメントはあくまで補助的な役割であり、基本はバランスの良い食事から鉄を摂るのが理想です。その理由は以下の通りです:

理由 解説
吸収バランスが自然 食品に含まれる鉄は他の栄養素(ビタミンCやたんぱく質など)と一緒に働きやすい
過剰摂取になりにくい 食事からの鉄は、体が必要に応じて吸収量を調整する機能がある
長期的な健康につながる 鉄以外の栄養素も一緒に摂れるため、全体的な栄養バランスが整いやすい
胃腸への負担が少ない サプリに比べて、副作用の心配が少ない

特に妊娠中や授乳中の方、医師から鉄剤を処方されていない方は、サプリメントを自己判断で多用するよりも、まずは鉄を多く含む食品とその組み合わせ(吸収を高める工夫)を意識した食事を心がけることが大切です。

まとめ|鉄分はヘム鉄と非ヘム鉄を理解して毎日コツコツ補うのが健康のカギ

まとめ|鉄分はヘム鉄と非ヘム鉄を理解して毎日コツコツ補うのが健康のカギ

鉄分は、体にも心にも大切な栄養素です。しかし、吸収率の違いや月経・妊娠などの影響で、思っている以上に不足しやすいのも事実です。

今回ご紹介したように、

    • 自分に必要な鉄分の1日あたりの量を知り
    • 吸収されやすいヘム鉄・非ヘム鉄の特徴を理解し
    • 食事の工夫や組み合わせで効率よく補う

これらを意識することで、無理なく鉄分を補給することができます。

サプリに頼りすぎず、まずは日々の食事から。毎日の「コツコツ」が、疲れにくい体・整った気分・健やかな見た目へとつながっていきます。